あらすじ
70歳のベン(ロバート・デ・ニーロ)は、長年勤めた会社を退職し、妻にも先立たれ、静かな日々を過ごしていました。それなりに充実した老後を送っていたはずなのに、どこかにぽっかりと穴が開いている。「もう一度、社会と関わりたい」――そんな思いから、ベンはシニア・インターン制度に応募します。
彼が配属されたのは、若き女性CEOジュールズ(アン・ハサウェイ)が率いるオンラインファッションサイト「アバウト・ザ・フィット」。創業わずか1年半で急成長中の企業です。
若者ばかりの職場に、70歳の新入り。誰もが最初は戸惑い、ベン自身も「ここで何ができるのか」と思いながら、少しずつ環境に溶け込んでいきます。やがて彼は、ジュールズの近くで働くことになり、仕事もプライベートも慌ただしい彼女を静かに支えていくのです。
見どころ①:70歳の新人――“年齢”という概念を超える主人公
ベンというキャラクターは、ただの「おじいさん」ではありません。彼は礼儀正しく、仕事熱心で、誰に対しても敬意を忘れない。でも同時に、ユーモアがあり、柔軟で、若者の文化を素直に楽しもうとする姿勢があります。
「自分はもう古い人間だ」と卑下せず、「学ぶ姿勢」を持ち続ける。この姿が、見ていてとても清々しいんです。
オフィスでスーツを着ているのは彼だけ。若者たちはラフな格好で、音楽を聴きながら仕事をしている。でも、誰もベンのことを笑わない。むしろ、その姿勢を見て「ちゃんとしてるな」と感じる。
この映画は、年齢を笑うのではなく、年齢が持つ「経験値」を描いています。ベンの存在が、オフィス全体の空気を少しずつ変えていく。それが本当に気持ちいい。
見どころ②:アン・ハサウェイ演じる“働く女性”のリアル
ジュールズは、まさに現代を生きるキャリアウーマンの象徴です。若くして会社を立ち上げ、従業員を100人以上抱えるCEO。家庭もあり、夫と子どもとの関係にも悩みながら、仕事に全力を注ぐ。
彼女のキャラクターは完璧ではありません。忙しさのあまり部下に厳しくなったり、夫との関係がぎくしゃくしたり。でも、その不器用さがすごく人間らしい。
ベンとジュールズの関係は、恋愛ではなく「信頼」。立場も年齢も違う二人が、仕事を通じて“互いに必要な存在”になっていく。それがこの映画の美しさです。
アン・ハサウェイの演技も素晴らしく、表情の一つひとつにリアリティがあります。「強い女性であろうとするけど、誰かに支えてほしい」という矛盾を自然に演じていて、観ているこちらも共感せずにいられません。
見どころ③:優しさと誠実さが作る、“人との関わり”の温度
この映画が心に残るのは、派手な展開やドラマチックな演出ではなく、日常の中にある「人との関わりの美しさ」です。
ベンは誰かに特別なことをするわけではありません。ただ相手の話を聞き、困っている人にそっと手を差し伸べる。その“さりげなさ”が、現代社会では一番難しい。
職場で落ち込んでいる同僚を励まし、ジュールズのミスを責めずに支える。そして、彼女の家族にも静かに寄り添う。
「やさしさ」は押し付けではなく、相手を見守ること。この映画はそれを丁寧に描いています。観終わるころには、自分も誰かに優しくしたくなる。そんな温かさが残ります。
見どころ④:人生の“次の章”をどう生きるか
『マイ・インターン』は、若者向けの映画のようでいて、実は大人にこそ響く物語です。
ベンは過去の栄光にすがらず、新しい環境に飛び込む勇気を持っている。年齢を理由に諦めず、挑戦することの意味を教えてくれる。
そしてジュールズは、完璧を目指して苦しみながらも、最後には「人に頼る勇気」を見つける。誰かに支えてもらうことを恥ずかしいと思わず、素直に受け入れること。それが彼女の成長であり、ベンとの出会いの答えでもあります。
この二人の物語は、世代を超えた“リレー”のようです。ベンが若者に未来を託し、若者がベンの人生を尊重する。その関係がとても自然で、見ていて心地いい。
まとめ
『マイ・インターン』は、人生における“関わり合いの豊かさ”を描いた映画です。派手な事件も、壮大なテーマもない。でも、その静けさの中に、人間として大切なものがすべて詰まっています。
「誰かを支えること」「信じること」「頼ること」。そのどれもが、決して一方通行ではなく、互いを成長させていく行為。
ベンとジュールズの関係を見ていると、年齢も立場も関係なく、“人は支え合うことで前に進める”という当たり前のことを、改めて感じさせてくれます。
仕事に疲れたとき、自分の存在意義が分からなくなったとき、この映画はきっと、あなたの心を少し軽くしてくれるはずです。
作品情報
| タイトル | マイ・インターン |
|---|---|
| 原題 | The Intern |
| 公開年 | 2015年 |
| 監督 | ナンシー・マイヤーズ |
| 出演 | ロバート・デ・ニーロ、アン・ハサウェイ、レネ・ルッソ、アンダーズ・ホーム、ジョジョ・クシュナー |
| 配信 | U-NEXT、Amazon Prime Videoほか |
