『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』感想・レビュー|失敗から始まる最高のミッション

目次

あらすじ

核爆弾をめぐる陰謀のなか、IMF(インポッシブル・ミッション・フォース)は突然の解体命令を受ける。
国家から見捨てられたエージェント、イーサン・ハント(トム・クルーズ)は、わずかな仲間とともに“非公式”のミッションに挑む。

政府の支援も装備もない。
失敗すれば“存在しなかったこと”になる。
それが、ゴースト・プロトコル。

ドバイの高層ビル、モスクワの爆破、砂嵐の中のカーチェイス。
世界各地を駆け抜けながら、イーサンたちはただ一つの信念を貫く――
「誰も信じられなくても、仲間だけは信じる」。

見どころ①:トム・クルーズの“本気”が映像そのものを動かす

この映画を観てまず思うのは、
「トム・クルーズ、もはや人間やめてないか?」ということだ。

あのドバイのシーン。
ブルジュ・ハリファの外壁を、素手で、ガラスに吸盤みたいなグローブをつけて登る。
あれは全部、本人がやっている。
CGじゃない。セットでもない。
リアルな空の高さ。リアルな風圧。リアルな命の危険。

普通の俳優なら「代役を立てましょう」と言う。
でもトム・クルーズは「いや、俺がやる」。
この人、本当にやるんですよ。

しかも、そこが“演技”になっているのがすごい。
彼が本気で恐れて、必死に体を動かしている瞬間こそが、イーサン・ハントというキャラクターの“現実”になる。
観ている方も手汗が止まらない。
でもその汗の中に、少しの感動がある。

なぜなら、彼がやっているのは“ヒーローの仕事”ではなく、
「約束を果たすための人間の努力」だからだ。
命がけなのに、どこか不器用。
どこまでも完璧に見えて、ギリギリのところで人間くさい。

『ミッション:インポッシブル』シリーズがここまで続いている理由は、きっとそこだ。
派手なアクションの裏に、ちゃんと「人の意地」が見える。
それが観客を惹きつけて離さない。

見どころ②:チームで挑む新しい『M:I』の姿

この作品で一番の変化は、イーサン・ハントが“孤高のスパイ”ではなくなったことだ。

前作までのイーサンは、すべてを自分で背負い、命令を破ってでも結果を出すタイプ。
でもこの作品では、イーサンが“チームに委ねる”。

ベンジー(サイモン・ペッグ)は軽口を叩きながらも、
高精度のガジェットを次々に操る。
ブラン(ジェレミー・レナー)は謎の過去を抱えた元エージェント。
慎重で、冷静で、それでいて熱い。
カーター(ポーラ・パットン)は強さと優しさを併せ持つ女性エージェント。

この4人が、それぞれの得意分野を活かして、
まるで“リレー”のようにミッションをつないでいく。

しかも、このチームが完璧じゃないのがいい。
失敗する。焦る。迷う。
それでも何とか立て直して前に進む。

シリーズの中で最も「人間的なミッション」になったのが、この4作目だと思う。
誰も万能じゃない。
でも、誰かが助けてくれる。
その安心感と熱が、観ている側にも伝わる。

“イーサン・ハント=孤独なスパイ”というイメージを変えたのが、この映画の大きな功績だ。
ここから先、シリーズは“チームの物語”として一気に広がっていく。
それを決定づけたのが『ゴースト・プロトコル』だった。

見どころ③:緊張と笑いが共存するテンポの良さ

この映画、テンポが最高に気持ちいい。
常にギリギリで、失敗と成功の境界を行ったり来たりしている。

爆破、潜入、ハッキング、脱出。
一つ一つのミッションにちゃんと「笑いどころ」がある。

例えば、作戦がズレてベンジーが慌ててごまかす。
真剣なのにちょっと間抜け。
その一瞬の“ゆるさ”が、緊張の連続の中に呼吸を作る。

映画って、ずっと緊張していると疲れる。
でもこの作品は違う。
「ここで笑って」「ここで息を止めて」「ここでまた走る」。
そのリズムが抜群にうまい。

監督のブラッド・バード(『Mr.インクレディブル』の人)は、
アニメーションのテンポ感を実写に持ち込んでいる。
だから、どんなに複雑なアクションでも“分かる”し、“面白い”。

アクションの中に“遊び”がある。
それがこの作品の大きな魅力だ。

まとめ:ここから『M:I』は生まれ変わった

『ゴースト・プロトコル』は、“再出発”の作品だ。
単なる4作目ではなく、シリーズの新しい始まり。

この作品で築かれた「チーム」「人間味」「リアルアクション」という3本柱が、
今の『ミッション:インポッシブル』の方向性を作った。

派手な映画だけど、根底にあるのは“信頼”。
誰かを信じること。
そして、自分を信じること。

どんなテクノロジーやスパイ道具よりも、
人間の手と心が最後の武器になる。
そんなメッセージが、この映画のど真ん中にある。

観終わったあとに残るのは、“爽快感”だけじゃない。
「また頑張ろう」と思える前向きなエネルギー。
映画を観て元気になれる――
そんな娯楽映画は、今もそう多くない。

作品情報

タイトル: ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル
原題: Mission: Impossible – Ghost Protocol
公開年: 2011年
監督: ブラッド・バード
出演: トム・クルーズ、ジェレミー・レナー、ポーラ・パットン、サイモン・ペッグ
配信: U-NEXT、Amazon Prime Videoほか
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