『ミッション:インポッシブル2』感想・レビュー|スパイが“踊る”と、世界は静かになる

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あらすじ

IMFのトップエージェント、イーサン・ハント(トム・クルーズ)は、新たな任務に挑むことになります。

それは、奪われた致死性ウイルス「キメラ」と、その抗体「ベレロフォン」を回収するという危険なミッション。

敵はかつてIMFに所属していたショーン・アンブローズ(ダグレイ・スコット)。イーサンと同じスパイとして訓練を受けた男であり、いわば“もう一人のイーサン・ハント”ともいえる存在です。アンブローズはウイルスを利用し、巨額の利益と権力を得ようと企んでいました。

イーサンは、元泥棒のナイア・ノードフ=ホール(タンディ・ニュートン)をチームに加え、任務に挑みます。しかし、彼女はかつてアンブローズの恋人でもあった。危険と裏切りが交錯する中で、イーサンとナイアの間に芽生える感情が、任務をさらに複雑にしていきます。

燃える街。爆発する車。荒野を駆け抜けるバイク。ジョン・ウー監督による圧倒的なスタイルと、トム・クルーズの肉体を駆使したアクション。『ミッション:インポッシブル2』は、シリーズの中でも最も“派手”で“エモーショナル”な作品です。

見どころ①:ジョン・ウーが魅せる、様式美のアクション

『M:I-2』を語るうえで欠かせないのが、ジョン・ウー監督の“美学”です。銃弾がスローモーションで舞い、白いハトが羽ばたく。炎と風と音楽の中で、トム・クルーズが走り、飛び、ぶつかり合う。

まるでアクションというより「舞」。暴力的なのに、どこか詩的で、感情が動く。ジョン・ウーらしいスローモーションと左右対称の構図が、全編を通して一貫しているのが特徴です。

ラストのバイクチェイスは、もはや伝説。互いに銃を構え、ヘルメットを脱ぎ、真正面から突っ込む。現実離れしているのに、なぜか納得してしまう“熱”がある。それは物理法則を超えても、“人の意地”として成立しているからかもしれません。

派手で、極端で、でも妙に胸が高鳴る。この映画が公開された2000年当時、アクション映画にここまでのスタイルを持ち込んだ作品はほとんどありませんでした。“リアルさ”より“かっこよさ”。それをここまで突き詰めた映画は、今でも珍しい。

見どころ②:トム・クルーズのカリスマ性が完成した瞬間

1作目のイーサンは、まだチームの中のリーダーでした。しかし『M:I-2』では、完全に“トム・クルーズの映画”になっています。

冒頭、ロッククライミングで崖を登るシーン。あれはCGでもスタントでもなく、トム本人が挑んだ実写。あの瞬間、観客は“本物のヒーロー”を見た気がします。

ジョン・ウーはトムの“動き”を信じて、あえてカメラを長く回す。無駄に編集せず、体のラインと動作で魅せる。結果として、トム・クルーズという俳優のフィジカルと集中力が、スクリーンを支配するんです。

そして何より、この作品のトムには“余裕”がある。1作目の緊張感よりも、もっと自由で、本能的。笑うシーンも多く、危険の中で生きていることを楽しんでいるようにも見える。

それが『M:I-2』を“アクション映画”という枠を超えた“パフォーマンス映画”にしています。彼がジャンプし、バイクでスピンし、砂埃の中で構える――その一瞬一瞬が、映画の中で“名刺”のように光っている。

見どころ③:愛と任務の狭間で

『M:I-2』が他のシリーズと大きく違うのは、明確に「恋愛」が中心にあること。イーサンとナイアの関係は、スパイ映画にしてはあまりにも正直で、純粋です。

二人は出会ってすぐに惹かれ合い、任務のために距離を取らなければならない。お互いに嘘をつく立場なのに、本気で想い合ってしまう。その“矛盾”が切ない。

ナイアがウイルスを自らの体に注入する場面は、この作品の象徴です。愛しているからこそ離れる。守るために犠牲になる。その古典的な構図が、ジョン・ウーの美学と完璧に重なっています。

イーサンが彼女を見つめる目には、スパイの冷たさではなく、人間としての苦しみがあります。命令よりも感情を優先してしまうヒーロー。その弱さが、イーサンをより“リアル”な存在にしている。

まとめ

『ミッション:インポッシブル2』は、シリーズの中で最も賛否が分かれる作品です。リアルさよりもスタイル。論理よりも感情。でも、そこにしかない“熱量”がある。

ジョン・ウーの手にかかると、スパイ映画がアクションバレエになる。美しい構図と派手な爆破の中に、哀しみや情熱が流れている。

そしてこの作品があったからこそ、3以降の“人間としてのイーサン”が生まれた。暴走のような映像と感情のぶつかり合いが、次の冷静な展開を引き立てている。

『M:I-2』は、シリーズの“青春”です。荒削りで、まっすぐで、眩しい。どこか青臭いほどの情熱が、スクリーンいっぱいに焼き付いている。

完璧ではない。でも、そこがいい。イーサン・ハントという男の“熱”を感じたいなら、この作品を外すことはできません。

作品情報

タイトル: ミッション:インポッシブル2
原題: Mission: Impossible 2
公開年: 2000年
監督: ジョン・ウー
出演: トム・クルーズ、タンディ・ニュートン、ダグレイ・スコット、ヴィング・レイムス、アンソニー・ホプキンス
配信: U-NEXT、Amazon Prime Videoほか
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