あらすじ
世界中のシステムや情報網を自在に操る“エンティティ”と呼ばれるAIが暴走し、国家間の均衡が崩れ始めています。
各国はエンティティを掌握しようと暗躍し、その中心にあるのが“鍵”と呼ばれる謎のアイテムです。
イーサン・ハント(トム・クルーズ)はIMFに戻り、仲間のベンジー(サイモン・ペッグ)、ルーサー(ヴィング・レイムス)と合流します。
彼らの使命は、この“鍵”を正しい手に渡すこと。
しかし、その状況にはイルサ(レベッカ・ファーガソン)の影、そして予測不能で危険な大泥棒グレイス(ヘイリー・アトウェル)の存在も絡んでいます。
敵は国家、そしてAI。
イーサンは“誰を信じるか”だけでなく、“誰を救うか”という選択を迫られます。
その選択はやがて、彼自身の未来にも深く関わっていくことになります。
見どころ①:ついにシリーズは“AI”へ――現代に刺さる危機とリアリティ
今作が扱うのは、“制御不能なAI”という現代的なテーマです。
エンティティはただのプログラムではなく、世界中のネットワークに潜伏し、嘘の情報を作り出し、国同士を疑心暗鬼に陥れていきます。
この設定が、想像以上にリアルで恐ろしい。
誤情報、SNS、フェイクニュース……。
“見えない敵が世界を支配する”という状況は、現代の私たちにも直結しています。
ミッション:インポッシブルは時代の空気を映してきたシリーズですが、今作はその中でも特に“現在進行形の脅威”をストレートに描いた一本です。
「敵がどこにいるのか分からない」という怖さではなく、「敵が実体を持たない」という新しい恐怖。
このコンセプトが、物語全体に独特の緊張感を与えています。
見どころ②:ローマ、ヴェネツィア、砂漠――場所そのものがドラマを動かす
今作は、ロケーションの魅力が物語の空気をさらに豊かにしています。
たとえばローマでのカーチェイス。
イーサンとグレイスがハンドカフで繋がれたまま、小型電気自動車で街を逃げ回るシーンは、スリルとユーモアが同居し、このシリーズに新しい温度を生み出しています。
ヴェネツィアの夜は一転して緊張感が漂います。
陰影が強い路地裏、仮面、入り組んだ街並み。
“運命が変わる瞬間”のような空気が、そのまま画面に焼き付いています。
砂漠ではスパイ映画らしい駆け引きが展開し、列車では息を飲むアクションシークエンスが展開されます。
どのシーンも“場所が物語を押し進めている”と感じられるほど印象的で、撮影地そのものがキャラクターとして機能しています。
見どころ③:グレイスという新たな存在――イーサンの未来を揺さぶる
今作の最大のキーパーソンは、ヘイリー・アトウェル演じるグレイスです。
彼女はエージェントではなく、一流のスリ師。
常に“自分のために動く”というスタンスで、イーサンとはまったく異なる価値観の持ち主です。
だからこそ、彼女の行動は予測できず、イーサンにとって“助けるべき存在なのかどうか”が終始揺れ動きます。
その一方で、イーサンは彼女にどこか優しさを向けます。
立場も経験も異なる二人が、徐々に信頼を築いていく姿は、これまでのシリーズにはなかった“新しい関係性”です。
イルサとは違う、もう一つの絆。
そしてこの絆が、今作の選択をさらに重くしています。
“イーサンが誰を救うのか”。
その答えが、物語の深い部分に突き刺さります。
見どころ④:シリーズ史上“もっとも残酷な選択”
今作では“選択”というテーマがこれまで以上に強く描かれます。
イーサンは、使命と大切な人の間で何度も迷い、揺れて、苦しみます。
そして彼が下す選択は、シリーズでも屈指の残酷さを持っています。
ネタバレは避けますが、「PART ONE」である理由は、この選択にすべて詰まっています。
ミッション:インポッシブルは派手なアクションだけでなく、“何を守り、何を手放すか”という人間的なドラマでもあります。
今作のイーサンが下す決断は、これまで彼が選んできたすべてを揺さぶり、PART TWOへと深い影を落としていきます。
これこそが、“最終章の幕開け”と言われる所以です。
まとめ
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』は、ミッション:インポッシブルの“最終章の入り口”となる作品です。
AIという新しい敵。
裏切りと駆け引き。
そして新たに生まれた絆。
すべてが複雑に絡まりながら、イーサン・ハントという男をこれまで以上に追い詰めていきます。
アクションは過激で、ユーモアもあり、シリーズの大きなうねりが動き出す一本。
観終わったあとに残るのは、「これはまだ序章にすぎない」という確信です。
PART TWOへの期待をここまで強く残す作品はなかなかありません。
25年以上続くこのシリーズの本当のクライマックスが、ついに動き始めた――その実感を与えてくれる映画です。
作品情報
| タイトル | ミッション:インポッシブル/デッドレコニング |
|---|---|
| 原題 | Mission: Impossible – Dead Reckoning Part One |
| 公開年 | 2023年 |
| 監督 | クリストファー・マッカリー |
| 出演 | トム・クルーズ、ヘイリー・アトウェル、サイモン・ペッグ、ヴィング・レイムス、レベッカ・ファーガソン、ヴァネッサ・カービー、エサイ・モラレス |
| 配信 | U-NEXT、Amazon Prime Videoほか |
